この歴史的な一戦の背景には、燃える闘魂・アントニオ猪木が構築した「世間と戦うプロレス」という思想が根底に流れている。大仁田厚は猪木の仕掛け人精神を独自に解釈し、あらゆるメディアを駆使して長州力を追い詰めた。自らの肉体を爆破の危険に晒しながらも話題を提供し続けるその手法は、従来のプロレス興行界の常識を根底から覆すものだった。
対する長州力もまた、猪木イズムの正統な継承者としてリングの尊厳を守るべく仁王立ちした。邪道の手法を「プロレスではない」と突っぱねつつも、大仁田が発する異常な熱量と観客の欲求を無視し続けることはできなかった。二人のプライドが正面から衝突した瞬間、単なる一試合にとどまらない巨大な社会現象が巻き起こったのである。