中山道の宿場町として栄えた追分宿の面影を今に伝える中軽井沢エリア。その駅前ロータリーの一角に、どっしりとした風格を漂わせる木造建築が佇んでいます。1870年(明治3年)創業の歴史を誇る「かぎもとや」は、まさに軽井沢の手打ちそば老舗を象徴する存在です。かつて中山道を往来した旅人の空腹を満たした素朴な一杯は、時代が移り変わっても変わらぬ製法で受け継がれてきました。
この店が提供する信州そば かぎもとやの神髄は、自家製粉した蕎麦粉を浅間山系の清冽な伏流水で打ち上げる「平打ち・太打ちの田舎蕎麦」にあります。白く透き通るような繊細な更科系とは対照的に、蕎麦殻の星が散りばめられた黒みがかった麺は、噛むほどに野趣あふれる香りと濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。飾らない大衆情緒と職人の確かな手仕事が共存する空間が、避暑地に訪れる人々の心を捉え続けています。