宝塚歌劇団の母体である阪急電鉄が築いてきた清廉な企業文化のなかで、真矢みきという「異端」がトップスターとして花開いた事実は極めて興味深い。規律と伝統を重んじる組織でありながら、突出した個性を包摂し、むしろそれを劇団の起爆剤として受け止めた懐の深さがあった。
彼女の魅力は、伝統への反発ではなく「伝統との対話」から生まれていた。基礎を徹底的に叩き込まれたからこそ、崩しの美学が成立する。礼儀作法を重んじるタカラジェンヌとしての矜持を持ちつつ、舞台上ではアグレッシブに攻める。この絶妙なバランス感覚があったからこそ、彼女の放つカリスマ性は一過性のブームに終わらず、時代を超越して語り継がれる強靭さを獲得した。