ネット上の情報では「最新AIを使えば文法知識は一切不要」「日本語をそのまま投げれば完璧なネイティブ表現になる」といった言説が氾濫しています。しかし、これは現場の実態を著しく無視した危険な誤解です。
AIは与えられた入力情報の「確率的に最も妥当な並び」を計算しているにすぎません。元の日本語が曖昧であれば、AIはその空白を「もっともらしい虚構」で埋め立てます。敬意を込めようとして婉曲表現を重ねれば重ねるほど、生成される英文は受動態が何重にも連なる悪文になるか、相手に対する自信のなさを示す表現(I think, It might be)で埋め尽くされてしまいます。
文法を学ぶ目的は、自力で完璧な英文を一から手書きするためだけではありません。「AIが書き出した文章が、自分の意図した強さ(トーン)で相手に届くか」「主語がすり替わっていないか」を正しくジャッジするための審美眼としてこそ、文法の基礎知識が不可欠なのです。ツールの進化によって求められるスキルは、「単語の記憶」から「文章構造のモニタリング能力」へと完全にシフトしています。