取材班が全国の昆虫ブリーダーやフィールド愛好家への聞き取り調査を行ったところ、幼虫の同定ミスに起因するトラブルが後を絶ちません。特に野外での材割り採集時と、複数種を同一スペースで管理している飼育環境において深刻な誤認が発生しています。
ブリード愛好家の手記や現場証言によると、最も多い失敗が「ノコギリクワガタの幼虫をオオクワガタと誤認し、高額な菌糸ビン飼育に投入して死亡・拒食させてしまうケース」です。菌糸ビンはオオヒラタケやヒラタケなどのキノコ菌糸が材を分解する力を利用した優れたエサですが、腐朽の進んだ柔らかい土状木を好むノコギリクワガタにとっては菌の活性が強すぎ、幼虫が潜れずにフタ付近で暴れ回った末に衰弱死してしまいます。ノコギリにはじっくりと発酵させた発酵マットが最適であり、幼虫の種別誤認は文字通り生命線に関わります。
また、野外の朽ち木から割り出した幼虫に多いのが「ゴミムシダマシの幼虫(キマワリなど)」や「ハナムグリ類の幼虫」との混同です。ハナムグリやカナブンの幼虫は、平らな場所に置くとコガネムシ特有の「背中で波打つように這う(背ばい)」動作を見せます。脚を使って腹を下にして這うクワガタとは歩行様式そのものが根本的に異なるため、机の上など平坦な面に置いて動きを観察することが現場での最も確実なスクリーニング手法となります。