制作を手掛けた日本放送協会(NHK)にとっても、本作は前例のない挑戦の連続だった。近代を舞台にした時代劇はヒットが難しいという長年の業界ジンクスを打ち破るべく、現場には異常な緊張感と熱狂が渦巻いていた。徹底した時代考証に基づき再現された血洗島のオープンセットや、パリの街並みを再現した美術チームの執念は、画面の隅々にまで異様なリアリティを宿らせている。
若き栄一を演じた吉沢亮の役作りも鬼気迫るものがあった。百姓時代の泥臭い肉体労働シーンから、老年期の重厚な語り口までを演じ分けるため、体重の増減や発声方法の抜本的改革を敢行。撮影合間には方言指導のテープを擦り切れるほど聞き込み、感情が限界突破する怒号のシーンではテイクを重ねるごとにスタッフ一同が息を呑んだという。妥協を一切排除したクリエイターたちの熱量が、名作の骨格を作り上げた。