溶接現場において、時に危険な慣習として見過ごされがちなのが「表面をグラインダーで削って滑らかにすれば検査を通る」という安易な思い込みです。
オーバーラップの本質は、垂れ下がった余剰金属の下にある母材との非溶着境界にあります。もし表面の出っ張りだけを軽くサンダーで削って平坦に見せかけたとしても、母材内部には目に見えないスリット状の割れ(融合不良)がそのまま残存しています。
この状態のまま製品を出荷した場合、運用開始後の曲げ応力や内圧変動によって残存した隙間から疲労破壊がスタートします。非破壊検査員が止端部を精密にチェックすれば、不自然な研削痕の下にある未融合部が検出され、最悪の場合は手直し範囲が全線再施工に拡大する事態に発展します。「見かけを取り繕う研削」ではなく、「欠陥部を完全に根絶する研削」でなければ手直しとしての意味をなしません。