インターネットの掲示板やSNSでは、昔から「自転車の鍵はビニール傘の骨を使えば簡単に開けられる」という情報が拡散されている。しかし、自転車整備士や防犯設備士への取材調査によると、この手法は現代の自転車においては完全に破綻した都市伝説である。
かつて昭和から平成初期に普及していた「板状のキー(プレスキー)」を差し込む単純な前輪錠や簡易馬蹄錠であれば、傘の骨の先端形状が偶然ロックバーを押し戻すことも理論上はあり得た。しかし、近年のシティサイクルや電動アシスト自転車に標準装備されている鍵は、ピッキング耐性の高いシリンダー錠やディンプルキー、頑丈なダイカスト製サークルロックが主流だ。内部構造の精度が格段に向上しているため、傘の骨を突っ込んでも鍵穴内部で骨が曲がって折れ曲がり、異物混入によってシリンダーが完全に再起不能になるだけである。
また、100円ショップの工具を用いたワイヤーロック切断についても注意が必要だ。細いワイヤー(直径3〜5mm程度)であれば小型のワイヤーカッターやボルトクリッパーで切断できる場合もあるが、近年主流の太径スチールワイヤーや多重構造ジョイントロックに対して100均工具を使用すると、工具の刃こぼれや破片の飛散による負傷を招く。安易な自力破壊は、時間と労力を浪費した挙げ句、怪我や車体損傷という最悪の結果に終わりやすい。