現役引退後、年寄・尾車を襲名した琴風は、1987年に佐渡ヶ嶽部屋から独立して尾車部屋を創設しました。自身の経験を踏まえ、「怪我に泣く力士を作らない」「心身ともに礼節を重んじる」という徹底した指導方針を掲げ、豪風(現・押尾川親方)、嘉風(現・中村親方)、友風、矢後といった個性豊かな実力派関取を数多く世に送り出しました。
長年にわたり隆盛を誇った尾車部屋ですが、2026年1月場所後に部屋を閉鎖する決断を下します。この閉鎖の決定的な理由は、尾車親方自身の「日本相撲協会定年(65歳)」に伴う組織再編でした。
後継者不在による消極的な解散ではなく、愛弟子である元関脇・豪風が年寄「押尾川」を襲名し、新たな部屋を設立して弟子たちを円滑に引き継ぐという、計画的かつ円満な事業承継でした。また、一部の力士や関係者は二所ノ関部屋などへ移籍し、尾車親方が蒔いた「誠実な相撲道」の種は、現在も若い世代の土俵に脈々と受け継がれています。