丸ごとの状態であれば冷暗所で数週間もつキャベツが、千切りにした途端に数時間から1日で劣化し始める理由には、明確な生化学的プロセスが存在します。キャベツの組織内部には、ポリフェノール化合物とポリフェノールオキシダーゼ(酸化酵素)が別々の区画に隔離されて存在しています。ところが、千切りという細断工程によって細胞壁が広範囲に破壊されると、両者が混ざり合い、大気中の酸素と触れ合うことで急速な酸化褐変(褐色化・赤色化)が進行するのです。
もう一つの大敵が「離水現象」です。切断面からにじみ出た水分が容器の底に溜まると、自身の重みと浸透圧によってさらに組織がふやけ、歯ざわりの命であるシャキシャキ感が失われてしまいます。さらに、濡れたまま密閉された環境は、常在菌や雑菌が繁殖する絶好の温床となり、特有のムワッとした青臭さや発酵臭を発生させる要因になります。
つまり、千切りキャベツを美味しく長持ちさせるための条件は、「酸素との接触を極力断つこと」「余分な水分を吸湿・遮断すること」「低温環境で酵素活性を低下させること」の3点に集約されます。