現在、オランダのオッテルローに位置するクレラー・ミュラー美術館に所蔵されている本作は、アムステルダムのゴッホ美術館が誇る膨大なコレクション群と並び、画家の全貌を理解する上で欠かせないピースだ。収集家ヘレネ・クレラー=ミュラーが初期からその真価を見抜き、散逸を防いだ功績は計り知れない。
両館が所蔵する素描や同時期の習作を比較すると、アルル滞在期にいかに急速な様式変化が起きていたかが分かる。パリ時代のくすんだ色調から、突如として解き放たれた原色の奔流。保存修復の最前線からは、当時の顔料の劣化度合いや保護ニスの影響についての新知見も報告されており、作品が描かれた当時の「本当の鮮やかさ」を取り戻す試みが静かに進められている。