モデナにある三つ星レストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のオーナーシェフ、マッシモ・ボットゥーラ(Massimo Bottura)。世界中の料理人に影響を与え、Netflix『シェフのテーブル』でも特集された伝説の料理人は、平たいパスタとソースの関わりについて明快な哲学を持つ。
彼が説くのは「表面積と乳化の力学」だ。平たい麺は丸い麺に比べて圧倒的に表面積が大きい。そのため、鍋の中でパスタの茹で汁に含まれるデンプン質と、ソースの油分を激しく撹拌(マンテカーレ)させた際、エマルションの膜が麺全体を均一にコーティングしやすい。
ボットゥーラが提唱するのは、ソースを「かける」のではなく、パスタパンの中で麺のデンプンをソースに溶け込ませ「一体化させる」技術。平麺を使う際、火を止める直前の30秒間でどれだけ激しくフライパンをあおり、煮汁の水分と脂質を乳化させられるか。これが、素人のパスタと一流レストランのパスタを分ける唯一の境界線なのだ。