1970年代から80年代にかけて、坂口良子という女優が放った輝きは唯一無二だった。『前略おふくろ様』での愛らしい演技、日本テレビの金字塔となった『池中玄太80キロ』で見せた芯の通った女性像、そして市川崑監督の映画『犬神家の一族』における圧倒的な可憐さ。昭和テレビドラマの黄金期を支えた彼女のキャリアは、順風満帆そのものに見えた。
しかし、私生活の現実はあまりにも過酷だった。1986年に結婚した不動産会社役員の元夫がバブル崩壊とともに莫大な負債を抱え、彼女自身が保証人となっていたことから約40億円とも言われる巨額の借金を背負わされる事態に陥った。昼夜を問わずドラマや舞台、地方営業に駆け回り、自らのギャラと労働力だけで借金をほぼ完済したというエピソードは、彼女の驚異的な責任感とプロ根性を象徴している。