1970年代後半から80年代にかけて、日本の音楽シーンには巨大な地殻変動が起きていた。甘くドリーミーなアイドルポップスが茶の間を席巻する一方、アンダーグラウンドでは骨太なロックカルチャーが着実に根を張っていた。この水と油に見えた二つの潮流を大胆に交差させ、「歌謡ロック」という唯一無二のジャンルへと昇華させた立役者こそがヘンリー広瀬だった。
彼のサウンドメイクは単なる流行の模倣ではない。アメリカ西海岸の乾いたウェストコースト・ロックや、ロンドン直系のタイトなビートを徹底的に研究し、そこに日本人特有のウェットな哀愁を帯びた旋律を緻密に噛み合わせる。派手なディストーションギターの裏で、絶妙なコード感と計算し尽くされたベースラインを走らせるその手腕は、当時のスタジオワークにおいて革命的ですらあった。