実録ヤクザ路線で頂点を極めた菅原文太は、1975年、さらなる新境地を切り拓く。鈴木則文監督の娯楽大作『トラック野郎 御意見無用』の誕生だ。彼が演じた主人公「一番星」こと星桃次郎は、情に厚く、女にめっぽう弱く、下品で愛すべきトラック運転手。血生臭いバイオレンスから一転、コミカルで生命力あふれる大衆の味方へと鮮やかな変身を遂げた。
愛川欽也演じる「やもめのジョナサン」との絶妙な掛け合い、デコトラが巻き起こすド派手なカーアクション、そして底辺で生きる人々への温かな眼差し。シリーズは全10作に及ぶメガヒットを記録し、菅原文太の名は子どもからお年寄りまで誰もが知る国民的アイコンとなった。ハードボイルドと人情喜劇、その双方で頂点を極めた稀代の演技力は、今なお色あせる気配すらない。