1947年に施行された日本国憲法の下、これまで数多くの国民審査が実施されてきましたが、過去に罷免された裁判官はただの1人も存在しません。昭和から令和の現在に至るまで「罷免率ゼロ」が続いている背景には、現行制度が抱える高いハードルが存在します。
裁判官が罷免される条件は、「投票総数のうち、×印がつけられた票(罷免可とする票)が過半数に達した場合」と定められています。しかし、多くの有権者は審査対象となる裁判官の業績や人となりを把握しきれておらず、結果として白票のまま投函するケースが圧倒的多数を占めます。この「無記入の白票」がすべて信任票としてカウントされる仕組みになっているため、×の比率が50%を超えることは現実的に極めて困難です。
過去最高記録となった下田武三元判事の不信任率15.17%を見ても分かるとおり、どれほど世論の逆風を浴びた人物であっても、過半数の罷免票を集めるには程遠いのが現状です。この事実は「信任されている」というよりは、「制度設計上、罷免が成立しにくい構造になっている」と読み解くのが正確な視点です。