緑内障の引き金となる最大の要因は「視神経の脆弱性」と「眼圧による物理的負荷」のバランスの崩れにあります。日本眼科学会が実施した大規模疫学調査(多治見スタディ)の確定データによれば、40代の緑内障発症率は約5.0%、すなわち20人に1人の割合で発症しており、70代以上では10人に1人を超える水準まで急上昇します。年を重ねるごとに視神経細胞の総数が減少し、眼圧に対する抵抗力が弱まるためです。
年齢と並んで警戒すべき筆頭因子が、若年層にも急増している強度近視と緑内障の発症リスクの関連性です。近視が進むと眼球が前後に伸びる「眼軸長の延長」が起こります。球体であるはずの眼球がラグビーボールのように引き伸ばされると、奥にある視神経乳頭や網膜が強く引っ張られ、解剖学的に強い歪みが生じます。この変形によって神経線維が物理的ストレスを受けやすくなり、通常の眼圧であっても神経が障害されてしまうのです。コンタクトレンズの度数がマイナス6ディエプター(-6D)を超える強度近視の人は、正視の人に比べて発症リスクが数倍に跳ね上がることが国内外の臨床研究で確認されています。
血縁関係も見逃せない重大な指標です。疫学データにおいて、両親や兄弟姉妹に患者がいる緑内障の遺伝や家族歴を持つ人は、そうでない人と比べて発症リスクが2〜4倍程度高まることが示されています。眼圧を調節する房水の流出路(線維柱帯)の網の目の細かさや、視神経乳頭の形状、さらには神経組織の硬さなどが遺伝的要因として受け継がれるためです。
日本人の発症様態において最も注視すべきなのが、正常眼圧緑内障の原因と理由です。眼圧の基準値は一般的に10〜21mmHgとされていますが、国内の緑内障患者の約72%は眼圧がこの基準値内に収まっているにもかかわらず視野障害が進行します。もともと視神経乳頭の耐圧強度が極めて低いことに加え、低血圧、睡眠時無呼吸症候群、極度の冷え性、視神経への血流障害など、全身の微小循環不全が複合的に関与している点が解明されつつあります。