愛希れいかの宝塚人生を語る上で欠かせないのが、「男役から娘役への転向」という大きな転機です。2009年に95期生として入団した当初、彼女は男役として月組に配属されました。身長167cmというプロポーションは娘役としては高めであり、男役としても将来を嘱望されるポジションにいました。
転機が訪れたのは研3(入団3年目)を迎えた2011年です。当時の月組トップスター・霧矢大夢の退団前年、バウホール公演や新人公演『アルジェの男』でサビーヌ役に大抜擢されたことが運命を分けました。劇団の演出陣は、彼女が醸し出す天性の可憐さ、そして何よりバレエで培われたしなやかな身のこなしとリフトに対する適性を瞬時に見抜いたのです。
「男役としての限界を感じたからではなく、舞台人としての表現の幅を広げるための必然的な決断だった」と当時の関係者は述懐します。2011年5月30日付で正式に娘役へ転向すると、その才能は爆発的な勢いで開花。わずか1年も経たない2012年、龍真咲の相手役として入団4年目にして月組トップ娘役に就任しました。これは近年の宝塚においても異例のスピード出世でした。
その後、龍真咲とのコンビで数々の名作を世に送り出し、相手役が珠城りょうに交代した後も引き続きトップ娘役を務めました。合計在任期間は約6年7カ月。平成以降のトップ娘役としては歴代上位に位置する長期政権を築き上げ、月組の黄金期を支え続けました。