ミスタードーナツを運営するダスキンが本格的な食事メニュー「ミスド飲茶」を立ち上げたのは1993年のことだ。当時、カフェ需要に依存していたファストフード市場において、昼食時や夕方の客足を定着させる施策として中華の巨匠・陳建民氏の愛弟子ら名料理人の知見を仰ぎ、開発プロジェクトが始動した。
その中心として開発されたのが汁そばである。専門店のこってりとした濃厚ラーメンとは真逆を行く「毎日食べても飽きない滋味深さ」を追求した結果、飾り気のない一杯が誕生した。当時の開発関係者の証言によると、「ドーナツの邪魔をせず、かつ食事として完結する一杯」という厳しい命題のもと、ミリ単位の味付け調整が繰り返されたという。
甘いスイーツの合間に塩気のある温かいスープを挟むことで、満腹中枢を心地よく刺激しながら味覚をリセットする。行動経済学における「対比効果」と「補完財モデル」が店舗空間の中で見事に機能しており、これが単なる軽食を超えたロングセラーの原動力となっている。