茜色に染まる海辺のロケーション。スーツ姿の高畑充希がスマートフォンを構え、唐突にアカペラで叫び出す。歌うはロックバンド・X JAPANの不朽の名曲「紅」だ。静寂を切り裂くようなハイトーンボイスと、鬼気迫る表情。あまりの迫力に、誰もが息を呑んだ。
あのシーンは決してリップシンク(口パク)ではない。現場で実際に本人が全力で発声し、収録された正真正銘の生歌だ。防波堤という吹きさらしの過酷な環境下、マイクが拾ったのは彼女の生々しい呼吸と喉の震えそのものだった。スタッフ全員が鳥肌を立てたというテイクが、そのままテレビコマーシャルとして世に放たれたのである。計算された美しさではなく、内側からあふれ出る野生味こそが、あの熱唱シーンに唯一無二の説得力を与えた。