熊本の名門・済々黌高校を卒業後、俳優を志して上京した財津一郎の若い頃は、決して平坦な道ばかりではありませんでした。映画会社のニューフェイスや演劇研究所を経て浅草の舞台に立ち、喜劇の腕を磨き続けます。転機となったのは、大阪へ拠点を移して吉本新喜劇に入団したことでした。
1960年代の怪物番組『てなもんや三度笠』で浪人・蛇口一角役を演じると、甲高い声で放つ「キビシ〜ッ!」や「〜してチョーダイ!」といったフレーズが大ヒット。日本中の子どもから大人までが真似をする社会現象を巻き起こしました。
コメディアンとして頂点を極めた後も、財津さんはひとつの枠にとどまりませんでした。1970年代以降は本格的な俳優へとシフトし、テレビドラマ『3年B組金八先生』では英語教師の左右田先生役を好演。コミカルな一面を封印し、思春期の生徒たちと真摯に向き合う厳格かつ情に厚い教師像を作り上げ、名脇役としての評価を不動のものにしました。映画や大河ドラマ、ミュージカルまで幅広くこなす柔軟な経歴こそ、財津一郎という俳優の真骨頂です。