この愛憎劇において、もっとも複雑な立場に置かれているのが、母である三田寛子と父の中村芝翫である。成駒屋の「女将」として長年家門を支え、数々の試練を乗り越えてきた三田寛子は、長男である橋之助の将来を誰よりも深く案じている。
一方で、自身も幾度となく浮名を生んできた中村芝翫の存在も、家族の葛藤に影を落とす。息子の奔放な愛を無条件に咎められない父親の葛藤と、成駒屋の伝統と血脈を断固として守ろうとする母親の強い情念。家庭内で繰り広げられるこのドラマこそが、結婚への高いハードルとなって立ちはだかっていた。