「全摘出すべきか、一部を残すべきか」という術式の選択において、十分な情報共有と納得がなされていない場合、後悔の念は一段と強くなります。
甲状腺がん(主に頻度の高い乳頭がん)の治療においては、腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無、被膜外浸潤の程度に応じて「全摘術」と片側の葉を残す「葉切除(亜全摘)」が比較検討されます。全摘の強みは再発リスクを抑え、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)が可能になる点ですが、反回神経麻痺や副甲状腺機能低下のリスクは両側に及び、ホルモン剤の永続服用が確定します。一方、亜全摘であれば残った甲状腺が機能し、薬が不要になる可能性があるものの、残存甲状腺への再発リスクが残ります。
また、薬物治療が難航したバセドウ病の手術選択においても、「即効性のある甲状腺機能亢進症の根治」というメリットの裏に、機能亢進から一転して「永続的な機能低下症への移行」というデメリットが存在します。アイソトープ治療や抗甲状腺薬の継続という代替案を含め、それぞれの長短を天秤にかけた上での主体的な意思決定が不可欠です。