相手の闘気を感知して先手を打つ破壊殺・羅針は、格闘戦において事実上の「無敵のアルゴリズム」でした。柱クラスの剣士がどれほど剣技を研ぎ澄まし、命を削る覚悟で挑んだとしても、その強い「覚悟」や「闘志」こそが猗窩座のセンサーにとって最大の標的となってしまうからです。
では、無限城の死闘において、竈門炭治郎はいかにしてこの羅針を破ったのでしょうか。その鍵となったのが、父・炭十郎が体現していた「透き通る世界」と「無我の境地」でした。
炭治郎は戦闘中、猗窩座の強さの根源が「闘気の感知」にあることを見抜きます。そして、かつて父が巨大な熊を平然と討ち取った際の「殺気も闘気もなく、ただ植物のように佇んでいた姿」を想起しました。炭治郎は自らの怒り、焦り、攻撃意志のすべてを削ぎ落とし、闘気を完全にゼロ(虚無)にする境地に到達したのです。
闘気という情報入力が途絶えた瞬間、猗窩座の「羅針」はただの無駄な陣となり、索敵レーダーが完全にブラックアウトしました。直前まで相手の動きを完璧に予測していた猗窩座にとって、闘気を持たない炭治郎の太刀筋は「この世に存在しない亡霊」から斬りつけられるに等しい衝撃でした。至高の領域を武力によって極めようとした猗窩座が、皮肉にも「殺意を捨て去った純粋な無我」によってその鉄壁の陣を崩されることとなったのです。