平日の午後2時、雨がチラつく下北沢の路地裏。かつてインディーズバンドの隠れ家だったライブハウス「SHELTER」の前には、スマートフォンを手に掲げた長蛇の列ができていた。並んでいるのは日本の若者だけではない。北米、ヨーロッパ、アジア各国から訪れたファンが、物語の舞台となった聖地の空気を吸い込もうと息をのんでいる。
「パリから来ました。彼女の演奏を聴いた時、自分の部屋で一人で泣いていた夜が救われた気がしたんです」。そう語る22歳のフランス人留学生は、自作のピックを大事そうにポケットに仕舞い込んだ。単なる作品の聖地巡礼にとどまらない。ここに集う人々が求めているのは、過剰なSNS社会で疲弊した心が呼吸できる「逃げ場」であり、同時に感情の爆発現場そのものなのだ。