ヒョン・ソンウォル氏の原点は、1990年代から2000年代にかけて北朝鮮の音楽界を牽引した名門楽団にあります。平壌音楽舞踊大学を卒業後、普天堡(ポチョンボ)電子楽団や王在山(ワンジェサン)軽音楽団で本格的な歌手活動をスタート。澄んだソプラノボイスと堂々とした歌唱力で、瞬く間にトップスターへの階段を駆け上がりました。
彼女の代表作として名高いのが、テキスタイル工場で働く模範的な女性労働者の情熱をコミカルかつ軽快に歌い上げた名曲「駿馬(チュンマ)の娘」です。この楽曲の大ヒットにより、北朝鮮国内で知らない者はいない国民的歌手としての地位を確立。若い頃の彼女は、ステージ上で豊かな表現力と親しみやすい笑顔を見せ、金正日総書記の時代から体制の文化プロパガンダを象徴する存在として重用されていました。
単なる歌い手にとどまらず、舞台演出や選曲構成に対する鋭い感覚を持っていた彼女は、芸術活動を通じて朝鮮労働党幹部や指導部との強固な人脈を築いていきました。