物語のクライマックスにおいて読者の胸を最も締め付けるのは、「運命の赤い糸」にまつわる残酷な真実と薫の選択です。薫は原を深く愛するあまり、自分の持つ力を使って「原に誰か別の運命の相手を結びつけてあげるべきではないか」「自分が原の未来を縛っているのではないか」という自己犠牲の念に苛まれます。愛しているからこそ手放さなければならないという薫の慟哭は、本作屈指の名シーンとして語り継がれています。
しかし、物語の結末で二人が辿り着いた答えは、与えられた運命への屈服ではありませんでした。原は「運命の糸がないなら、自分の意志でお前を選ぶ」と薫に真っ向から想いを告げます。既定路線の運命に身を委ねるのではなく、自分たちの意思で手を取り合い、新しい絆を結び直すことを決意するのです。
ラストシーンで見せる二人の穏やかで確固たる表情は、涙なしには見られません。「叶わぬ恋」という絶望的なタイトルから一転し、自らの手で愛を叶えてみせた二人の姿は、読者に深いカタルシスと温かい感動を与えてくれます。