十和田湖へ至る北側のルートは、険しくも荘厳な八甲田連峰の懐を潜り抜ける。この地は、歴史的名作として知られる映画『八甲田山』のロケーション舞台としても強烈な印象を刻んでいる。新田次郎の小説を原作とした同作で描かれた雪中行軍の壮絶な世界感は、冬の北東北が持つ厳粛な自然の猛威を今に伝えている。
しかし、その過酷な冬を越えた先に訪れる春の芽吹きは、筆舌に尽くしがたい感動をもたらす。初夏には新緑が湖畔を鮮やかな緑で包み込み、秋にはヤマモミジやカエデが黄金色や朱色に染まって湖面に反射する。冬には厳しい寒波とともに静寂が訪れ、樹氷と雪景色が水鏡を包み込む。過酷な気象条件があるからこそ、四季の移ろいはどこまでもドラマチックだ。
近年の暖冬傾向や気候変動の中にあっても、標高の高いこの地域が保持する独自のマイクロクライメイト(微気候)は健在である。季節の境目に見られる霧の発生や、湖上に架かる幻想的な二重の虹など、天候の変化そのものが自然のアトラクションとして旅人を魅了する。