時計の針を少し巻き戻そう。彼がイタリアの名門ACミランに移籍した当時、現地メディアやファンの間では、彼の眼球の突出や首元に残る痛々しい手術痕についての推測が飛び交っていた。
自己免疫疾患の一種であるバセドウ病(甲状腺機能亢進症)は、甲状腺を過剰に刺激し、代謝を異常に高めてしまう難病だ。運動量が命となるプロサッカー選手にとって、動悸や筋力低下、耐熱性の低下は致命的なハンデとなる。
本田は当時、病名を大々的に公表することはしなかった。それは言訳を嫌う彼独特のアスリート哲学によるものだったが、頸部に見られた手術痕は、彼が病の手術を受け、苛烈なプレッシャーの中でプレーを続けていた動かぬ証拠であった。