辻仁成といえば、小説『海峡の光』で芥川賞を受賞した稀代の文筆家であり、ロックバンドのボーカルとしても名を馳せた異色の才能だ。二人がパリで過ごした日々には、芸術家同士だからこそ共有できた深い静寂と、同時に生じた譲れないこだわりが同居していた。
異国の地で息子を育てる日々の中で、二人は言葉や文化の壁に向き合いながら絆を育んでいた。渡仏初期に現地のセーヌ川沿いを散歩しながら語り合ったというエピソードや、自宅の書斎で互いの作品について議論を戦わせた情景は、知る人ぞ知る秘蔵の記憶だ。表現者として惹かれ合った二人の愛の軌跡は、単なる芸能ニュースの枠を超え、ひとつのドラマティックな物語としての哀愁を帯びている。