神輿がここまでの巨大化を遂げた背景には、江戸開府を成し遂げた徳川家康の時代から続く町人文化のプライドがある。天下泰平の世、町衆は自らの神社の威光を競い合い、より豪奢で重厚な神輿を求めた。その熱狂を受け止めたのが、釘を一本も使わずに木を組み合わせる宮大工の高度な木工技術だ。
神輿は単なる箱ではない。歩行の衝撃を全体にしならせて力を逃す「仕口(しぐち)」の構造計算、幾重にも塗り重ねられた漆、精緻を極めた錺(かざり)金具。これら日本の伝統工芸産業の粋が結集して初めて、数トンの自重に耐えうる強度が生まれる。神社本庁の傘下にある各地の神社でも、これら古来の意匠を修繕・継承していく取り組みが熱心に行われている。