近年、彼のキャリアにおいて特筆すべき金字塔となったのが『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のクリスチャン役だ。ブロードウェイのメガヒット作が日本に上陸した際、東宝演劇部が主役として全幅の信頼を寄せたのが井上だった。
ボヘミアンの純粋な青年作家がたどる激しい恋の歓喜と絶望を、ポップミュージックの数々に乗せてエモーショナルに歌い上げる姿は、観客だけでなく批評家たちをも唸らせた。若手時代のような情熱のほとばしりと、長年の経験に裏打ちされた緻密な演技設計。その見事な融合は、年齢を重ねたからこそ到達できた新たな表現の極致であった。