このような製品デザインの背景には、20世紀後半に築かれたデザイン哲学の深い潮流が存在する。建築家であり自らも車椅子生活を送っていたロナルド・メイスは、「できるだけ多くの人が特別な改修なしで利用できる環境や製品づくり」を掲げ、ユニバーサルデザインの概念を提唱した。一方で、変装して自ら高齢者の肉体的な不自由さを擬似体験しながら都市生活の課題を炙り出したパトリシア・ムーアの先駆的な研究も、プロダクト開発に大きな影響を与えている。
二人が残した理念は、特定の弱者のための「思いやり」にとどまらない。障害の有無や年齢を問わず、全ての人が等しく享受できる空間や製品を生み出すインクルーシブデザインの思考へと受け継がれた。シャンプーボトルの刻印は、まさにこの偉大な理念が生活密着型の製品として結実した極めて身近な実例といえる。