数百年以上にわたり親しまれてきた「鶴」や「兜」に代表される伝承折り紙は、日本人が育んできた折り線の美学そのものである。和紙を折る所作には、神事や儀礼における包みの文化が根底にあり、本来は格式高い手芸であった。これが時代の変遷とともに庶民の遊びへと広がり、今日におけるペーパークラフトの礎を築いた。
この伝統工芸を近代的なアートや科学の領域へと昇華させた立役者が、昭和期に活躍した創作折り紙の巨匠、吉澤章だ。彼は図解表現(吉澤・ランドレット方式)を考案し、言語の壁を越えて世界中の誰もが複雑な折り図を解読できる共通言語を作った。吉澤が設立に深く関わった国際折紙研究会の活動などを通じて、紙を折る技術は世界的な幾何学・造形芸術として世界へと飛び立ったのである。