渡辺裕之の映画俳優としてのキャリアは、1982年公開の映画『オン・ザ・ロード』(松竹)から幕を開けました。数千人のオーディションを勝ち抜いて主役に抜擢された彼は、白バイ警官役を熱演。大型バイクを自在に操る卓越したライディングテクニックと鍛え上げられた肉体で脚光を浴び、第6回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。
その後、1984年の『ウィンディー』では国際的な舞台で活躍する二輪ロードレースライダーを演じ、スタントなしの過酷な撮影に挑むなど、日本を代表する本格派アクション俳優としての評価を不動のものとします。当時の映画関係者は「単なる肉体派にとどまらず、ストイックな役作りと台本を徹底的に読み込む知性を兼ね備えていた」と証言しています。
1990年代以降は、鍛錬されたフィジカルに加え、深みのある低音ボイスと理知的な眼差しを生かした指導者・指揮官役へと演技の幅を拡張。映画・Vシネマ・テレビドラマの枠を自在に行き来しながら、生涯で100本を超える映画・劇場版作品に出演し、日本映画の黄金期と変革期を支え続けました。