医療従事者が患者の病態や呼吸状態を評価する際、単に「息が苦しそうだからマスクをつける」という曖昧な判断は下しません。日本呼吸器学会などの臨床ガイドラインに則り、動脈血酸素飽和度(SpO2)の数値、動脈血ガス分析データ、換気量に基づいて最適なデバイスを選択します。
現場で使用される代表的なデバイスのスペックと流量設定基準は、以下の通り整理されています。
特に注視すべきは、単純酸素マスクにおける「5L/分以上」という下限設定です。酸素流量をむやみに下げて2〜3L/分でマスクを使用すると、患者自身の吐き出した二酸化炭素がマスク外へ押し出されず、高濃度の二酸化炭素を再び吸い込んでしまう「再呼吸」の危険が生じます。流量を下げる場合は、マスクから鼻カニューラへの器具変更が必須原則となります。
一方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など二酸化炭素が体内に溜まりやすい患者には、ベンチュリー効果(流体の狭窄部を通過する際に流速が上がり圧力が下がる物理現象)を利用したベンチュリーマスクが選定されます。外気と酸素を一定の比率で強制混合し、呼吸パターンに関わらず常に正確な濃度の酸素ガスを大流量で送り届けることで、生命危機を回避する設計です。