実写化作品において、原作ファンからの支持を得ることは極めて難度の高いハードルです。しかし、上白石萌音が演じた大江奏は、ビジュアル公開直後から「原作からそのまま抜け出してきたようだ」と絶賛を集めました。その背景には、細部にまでこだわり抜いた徹底的な役作りがあります。
劇中で大江奏は、かるた部に「試合では必ず袴を着用すること」を条件に入部します。上白石萌音は撮影前から徹底的な着付けや立ち居振る舞い、正座の所作を体に叩き込みました。激しい競技かるたの動きの中でも決して崩れない美しい袴姿と凛とした所作は、映画に本格的な和の気品をもたらしました。
さらに特筆すべきは、百人一首の歌を読み解く際の声の表現力です。主人公・綾瀬千早(広瀬すず)に対して「ちはやぶる」の歌に込められた情熱や切なさを語り聞かせる場面は、シリーズ屈指の名シーンとして知られています。単なる説明台詞に陥ることなく、1000年前の歌人の息づかいを現代に蘇らせるような響きを持つ彼女の台詞術は、作品全体のドラマ性を一段深い次元へと引き上げました。