ウェストハムを語る上で欠かせないのが、本拠地ロンドン・スタジアム(旧2012年ロンドン五輪メインスタジアム)を包み込む独特の熱気です。キックオフ直前、スタジアム全体に巨大なシャボン玉が舞い上がり、6万人を超える観衆が一斉にアンセム『I'm Forever Blowing Bubbles(アイム・フォーエバー・ブローイング・バブルズ)』を合唱する光景は、フットボール界屈指のスペクタクルとして知られています。
1904年から112年間にわたって愛された旧本拠地「ブーリン・グラウンド(通称アップトン・パーク)」からの移転当初、スタンドとピッチの距離感や陸上トラックの存在を巡り、伝統を重んじる地元コミュニティとの間に激しい摩擦が生じました。当時のサポーターズ・トラストによる声明や現地ファンの証言でも「魂が売られた」「本物のフットボールスタジアムではない」といった痛烈な批判が寄せられた歴史があります。
しかし移転から約10年が経過した現在、改修による観客席のピッチ接近やロンドン東部の再開発事業(ストラトフォード地区の発展)との相乗効果により、新たなホームとしての威厳が完全に定着しました。造船所「テムズ・アイアンワークス」の職工たちによって1895年に創設された歴史的ルーツ(クラブの愛称「アイアンズ」「ハマーズ」の由来)は、近代的なメガスタジアムのスタンドにも脈々と受け継がれています。