藤田の画家としての名声を決定づけたのが、「宇宙」シリーズおよび「クリシス(Chrysis)」シリーズという二大連作である。
「宇宙」シリーズでは、膨張を続ける無限の虚空と、そこに点在する星々の息吹が油彩の粒子で緻密に組み上げられている。漆黒のなかに浮かび上がる微光は、圧倒的な孤独と同時に深い安らぎを感じさせる。
一方の「クリシス」シリーズは、変容や危機、あるいは結晶化の瞬間を捉えた象徴的な試みだ。ギリシャ語に由来する言葉の響きを伴いながら、硬質な金属的要素と有機的なグラデーションが激しく交差する。画面の中で物質が崩壊し、新たな美として再構築されるダイナミズムは、現代社会を生きる人間の精神構造そのものを投影しているかのようだ。