日本の食文化において、病後の食卓を支え続けてきた筆頭といえば「おかゆ」だろう。単なる病人の気休めと思われがちだが、その生理学的な合理性は計り知れない。
料理研究家の土井善晴氏は、常々「一汁一菜」や日常の素朴な食事が持つ力、そして素材への優しさを説いている。土井氏が提案する丁寧にお米から炊き上げたおかゆは、水と米が一体化し、胃壁を優しく包み込むようななめらかさを持つ。無理に味を濃くせず、少量の塩や梅干しで仕上げる一杯は、傷ついた消化管にとって最高の薬膳とも言える。
歴史を遡れば、江戸時代の思想家・貝原益軒が著した『養生訓』にも、「病後は腹八分目以下に抑え、粥や温かな湯を以て胃気を養うべし」との記述が残されている。数百年前の生活の知恵と、現代の科学が見事に結実した「おかゆ」という存在は、病み上がりの身体にとって今なお最適解であり続けている。