李禹煥美術館の最大の特徴は、作品のために建築が作られ、建築のために作品が置かれるという、作家と建築家の極めて緊密な対話から誕生した点にあります。安藤忠雄氏が手掛けた李禹煥美術館の建築デザインは、海から山へと続く谷あいの地形に寄り添うように設計された「半地下構造」を採用しています。
エントランスへと向かうアプローチでは、高さのあるコンクリート壁に囲まれた細長い通路を歩きます。人工的な直線で切り取られた空の青や、風の音、足音の反響だけが響くこの動線は、外界の雑音を遮断し、鑑賞者の感覚を研ぎ澄ますための周到な導入部です。建築自体がひとつの大きな「額縁」となり、瀬戸内の自然と李禹煥の表現を媒介しています。
フランス・プロヴァンスの「李禹煥 アルル」など世界各地に展開する拠点の中でも、直島の施設は自然光とコンクリート、そして瀬戸内の自然環境が最も深く結びついた原点と言えます。