小泉道子氏は、怪談や日本研究で知られる小泉八雲の孫・小泉時(成城大学名誉教授・民俗学者)氏と結婚したことで小泉家の一員となりました。家庭に入ってから、義祖父である八雲や義祖母セツが遺した膨大な生活の記憶、口伝として残るエピソードの豊かさに魅了され、自ら筆を執るようになります。
エッセイストとしての小泉道子氏の経歴において転換点となったのは、1980年代から90年代にかけて精力的に発表された家庭視点のエッセイ群です。学術的な研究書とは一線を画し、台所や団らんの風景から八雲夫妻の息遣いを描き出すスタイルは、文学ファンのみならず料理研究家や歴史愛好家からも高い支持を集めました。その観察眼は極めて鋭く、八雲が好んだ西洋風の味付けと日本の伝統的な食材が融合した日常の営みを、生き生きとした文章で再現しています。