五島勉氏が引用し、日本中を恐怖させた詩は、16世紀の医師・占星術師ミシェル・ノストラダムスが遺した『百詩篇(Les Prophéties)』第10巻72番の詩です。ここで改めて、原典の中世フランス語と直訳、そして当時の一般的な日本語解釈を比較してみます。
【原詩(中世フランス語)】
L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois,
Du ciel viendra un grand Roy d'effrayeur,
Resusciter le grand Roy d'Angolmois,
Avant apres Mars regner par bon heur.
【学術的な直訳】
「1999年、7の月、
天から恐怖の大王が来るだろう。
アンゴルモワの大王を蘇らせるために。
その前後に、火星が幸福の名のもとに君臨するだろう。」
五島氏の訳本では「恐怖の大王が降りてきて世界を破滅させる」「アンゴルモワ=モンゴル=東洋からの侵略、あるいは破滅の君主」と劇的に翻訳されました。しかし、2026年時点の文献学・歴史学の定説において、この解釈は完全に否定されています。
フランス文学研究者の分析によると、「Angolmois(アンゴルモワ)」はノストラダムスが生きた当時のフランス王・フランソワ1世の領地であった「Angoumois(アングーモワ地方)」の古形アナグラムであることが判明しています。すなわち、16世紀当時のノストラダムスは、偉大なる君主の復活やフランス王家の栄光、あるいは1999年8月に欧州で観測された「皆既日食」などの天体イベントを、占星術的な暗喩を用いて詩的に描写したに過ぎないのです。「地球の滅亡」や「人類の終焉」といった文言は、原詩のどこにも一行たりとも書かれていません。