上野の韓国料理を語る上で絶対に外せないのが、台東区東上野2丁目に広がる通称「東上野コリアンタウン(キムチ横丁)」です。その起源は戦後間もない1948年(昭和23年)頃の闇市時代に遡り、新宿・新大久保よりもはるかに長い歴史を持つ「都内最古のコリアンタウン」として知られています。
この地域に一歩足を踏み入れると、昭和の東京にタイムスリップしたかのような細い路地と、唐辛子やごま油の芳醇な香りに包まれます。ここが新大久保と決定的に異なるのは、「観光地化されすぎていない、職人と住民のための本物の仕込み場」である点です。1960年創業の「第一物産」をはじめとするキムチ・食材専門店が軒を連ね、全国の有名焼肉店や韓国料理店が仕入れに訪れるほど高いプロの信頼を獲得しています。
東上野のキムチは、機械による大量生産ではなく、塩漬けからヤンニョム(合わせ調味料)の塗り込みまで熟練の職人による手作業で行われます。アミの塩辛やイワシエキスがしっかりと効いた発酵キムチは、酸味の中に奥行きのある旨味が凝縮されており、これを使った豚キムチチゲや純豆腐チゲは、他エリアでは決して真似のできない深いコクを生み出しています。