松方弘樹さんの卓越したスター性を語るうえで欠かせないのが、華麗なる芸能一家の血筋です。父親は「チャンバラの神様」「殺陣の最高峰」と称えられた伝説の時代劇スター・近衛十四郎さん、母親は女優の山本quinazoline(八重子)さんというサラブレッドとして生を受けました。
幼少期から映画の撮影現場を間近に見て育った松方さんですが、偉大すぎる父の存在は常に大きな壁として立ちはだかりました。父・近衛十四郎さんは私生活でも芸道に極めて厳格であり、若き日の松方さんは「二世俳優」という色眼鏡で見られる悔しさをバネに、徹底した稽古と演技の研鑽に励んだと述懐しています。
実弟である俳優の目黒祐樹さんもまた、国際派俳優としてハリウッド大作『SHOGUN』などで確固たる地位を築きました。兄弟でありながら互いの個性を尊重し合い、時に良きライバルとして、時に心強い盟友として昭和・平成のエンターテインメント界を牽引し合いました。この名門一家に流れる妥協なき役者魂こそが、松方さんの表現力の根底に脈々と息づいていたのです。