処遇の悪化以上に深刻なのが、ベテラン社員の「精神的ショックとモチベーションの喪失」です。長年、組織を牽引してきた自負がある社員ほど、制度による強制降格によってアイデンティティを揺さぶられます。
現場から漏れ出る当事者のリアルな告白
大手ITベンダーで部長職を務め、55歳で役職定年を迎えた男性(57歳)は、取材に対して次のように胸中を明かしました。
「昨日まで『部長』と呼んで指示を仰いできた部下が、翌日からは『〇〇さん』と呼び、こちらがかつての部下の指示で資料作成やコピー取りをする。頭では制度だと割り切っていても、会議で発言権が狭まり、重要な意思決定から外された瞬間、組織から『お前の価値はここまでだ』と宣告されたような強烈な疎外感を味わいました」
SNSやネット掲示板に溢れるシニア層の悲痛な声
SNSやビジネス掲示板(5chや知恵袋など)を検証すると、役職定年をめぐる生々しい評判や本音が多数書き込まれています。
- 「給与が35%下がったのに、求められる業務の質と量は以前と大して変わらない。完全にやりがいを搾取されている」
- 「元部下が上司になり、お互いに気まずくて指示が出しづらい空気が漂っている。社内に自分の居場所がない」
- 「モチベーションを保てず、いわゆる『妖精さん』『働かないシニア』化してしまう同僚の気持ちが痛いほどわかる」
組織心理学から見る「心理的契約の破綻」
組織心理学の観点では、この現象は「心理的契約(サイコロジカル・コントラクト)の侵害」として説明されます。会社のために滅私奉公で貢献してきたという自負に対し、企業側が「年齢」という個人の努力ではどうにもならない属性だけで一方的に梯子を外すことで、組織に対する信頼感や忠誠心が根底から崩壊してしまうのです。