本作が一筋縄ではいかないのは、裏切り夫個人の問題に留まらず、水面下で糸を引いていた義実家のエゴイズムが克明に描かれている点にある。「家のため」「嫁の務め」という時代錯誤な名分を盾に、主人公の財産やキャリアを毟り取ろうと画策していた親族たちの卑屈な本性が、弁護士を介した交渉の場で次々と暴かれていく様はまさに圧巻だ。
徹底した証拠主義。情に流されることなく、法と数字を武器に相手の逃げ道を塞いでいく展開は、スカッとする快感を越えてどこか現実の裁判記録を読むような緊張感すら漂わせる。法外な慰謝料請求と財産分与の厳格な執行により、見栄だけで成り立っていた元夫側のコミュニティが自壊していくプロセスは、因果応報の冷徹な重みを読者の脳裏に焼き付けた。