行動経済学や心理学には、すでに投じた費用や労力を惜しむあまり、誤った選択を撤回できなくなる「サンクコスト効果(埋没費用の罠)」という概念があります。これはバイク整備のDIYにおいても完全に当てはまります。
「せっかく1万円かけて工具を買ったのだから、意地でも自分でやり遂げなければ損だ」と思い詰め、リムが傷だらけになりビードが裂けかけているにもかかわらず、力任せに作業を続行してホイールごと破壊してしまう初心者が実に多いのです。整備において最も重要な知性は、「これ以上は機材や技術の限界だ」と見極めて作業を中断し、プロにヘルプを求められる損切り能力にあります。
最後に、タイヤ交換を自分で行うべき人と、ショップに潔く任せるべき人の客観的な判断基準を提示します。
【自分で手組みに挑戦すべき人の条件】 1. サーキット走行やオフロード走行を行い、年間で2回以上タイヤを摩耗・交換する環境にある。 2. 予期せぬトラブルや作業の中断が発生しても、保管できるガレージや代替の移動手段がある。 3. トルクレンチ等の締め付け管理工具を所持しており、アクスルシャフトやブレーキ周りの分解整備に慣れている。 4. 「愛車の構造を深く理解する作業プロセスそのもの」を趣味として楽しめる。
【最初からプロに依頼すべき人の条件】 1. 所有バイクが高級輸入車や大排気量ツアラーで、ホイールに1ミリの傷も付けたくない。 2. 日常の通勤・通学に使っており、翌朝までに確実にバイクを動かせる状態に保つ必要がある。 3. 高圧コンプレッサーや作業場所がなく、屋外の共用駐輪場などで作業せざるを得ない。 4. 工賃を浮かすことだけが唯一の目的であり、作業後のホイールバランス調整や廃棄手続きを面倒に感じる。