防衛省の内部記録を紐解くと、順調に見えた隊員生活の裏で、急速に精神のバランスを崩していく青年の姿が浮かび上がる。2005年、江田島の第1術科学校に勤務していた頃、山上は突如として自殺未遂を起こした。旧統一教会への多額の献金によって家庭が完全に崩壊し、自らの生命保険金を残された兄や妹に渡そうとした末の行動だった。
この事件は組織内で処理され、公にされることはなかったが、彼の孤独を埋める手立てにはならなかった。誰にも頼れず、自らの命を金に換えるしかないという極限の絶望。防衛省という巨大な組織機構の片隅で、若者の精神は修復不可能なほどに軋んでいた。任期満了による退官は、社会への新たな門出ではなく、拠り所を完全に失った流浪の始まりに過ぎなかった。