物語のクライマックスにおいて、作者の冨樫義博が選んだ表現手法は極めて前衛的だった。『週刊少年ジャンプ』および集英社のコミックスに掲載されたその光景は、数ページにわたり文字とフキダシのみで構成された「真っ黒なコマ」の連続だった。
視力を失ったメルエムと、もとより盲目であるコムギ。二人が共有する漆黒の世界を、読者自身にもそのまま体験させるという大胆不敵な演出だ。「コムギ、居るか」「はいな、居りますよ」という静かな対話の反復が、極限の暗闇の中で読者の想像力を極限まで増幅させた。
バトル描写や派手なエフェクトを極限まで削ぎ落とし、言葉と間(ま)の力だけで極上のカタルシスを生み出す。この実験的かつ洗練された構成力によって、『HUNTER×HUNTER』はダーク・ファンタジーの金字塔としての地位を不動のものにしたのである。